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人生を感じる画家 [アート]

 今日は、ゴッホ展を見に行ってきました。
 
 展覧会に行って、深く心が動かされるということはあまりないのですが、今日はなんだか涙が出そうになってしまいました。今日見た展覧会は、ゴッホの人生とともに作品をたどっていくという構成になっているのですが、音声ガイドを聞いたり、説明を読んだりしていると、一枚の絵画の中にゴッホの考え方や感じ方、苦しみや喜びが見えてきて、とても胸が締め付けられる思いがしました。

 ゴッホという画家は、神父の父親の元に生まれましたが、親の後をついで神父になろうとしたり、本屋の店員をしたり、教師をしたりと、仕事が長続きしない人でした。画家をめざしたのは27才の時。地元のオランダで絵画を学び、パリに出て印象派や日本の浮世絵と出会い、その色彩の豊かさと平面的で大胆な構図に感銘を受けます。その後、画家たちのユートピアをつくろうと南仏アルルに黄色い家をかまえ、そこにゴーギャンを呼び共同生活をはじめます。しかし、現実を直視して絵を描くゴッホと想像の世界を絵にするゴーギャンは、その考え方の違いにぶつかり、ゴッホの耳切り事件によってゴーギャンはアルルを離れてしまいます。その間わずか2ヶ月。ゴッホはゴーギャンを迎えるにあたって、部屋を整え、家具を調えました。この時に描かれた「ゴーギャンの椅子」という作品があるのですが、のゴーギャンに座ってほしいとゴッホが用意した豪華な椅子です。自分用の粗末な椅子と比べても、ゴッホがいかにゴーギャンとの共同生活を楽しみにしていたかがわかります。そのゴーギャンの椅子をモチーフにして描いたものです。尊敬するゴーギャンのためにそろえた豪華な椅子の上には、本と火のついたろうそくが置いてあります。この椅子はゴッホにとってはゴーギャンであり、ゴーギャンとの共同生活を楽しみにしながら筆を取るゴッホの気持ちとその2ヵ月後の悲劇とを考えると、せつなくなるのです。

 ゴッホの作品を見ていると、彼が何を考え、何を表現したかったのかがわかります。喜びと苦しみ、そして繊細で壊れやすいゴッホの姿が見えてくるのです。今でこそ天才と呼ばれ、オークションで高値で取引されるゴッホの絵は、彼が生きている間にはたった1枚しか売れず、貧乏と精神的な病に苦しんで、それでも絵を描き続けたゴッホ。「自分のすべてを作品にささげてきたから、自分自身が壊れてしまった。」と弟のテオに手紙を残し、37歳の若さでピストル自殺をしてしまうゴッホの絵には、その彼が自分のすべてをささげたという彼の生き様が見えてきます。こんなに素直で、こんなに正直、愚直といっていいほど真摯に絵に取り組んできた彼だからこそ、作品の中に自分のすべてが詰め込まれており、120後に生きる私たちにも彼の思いが生々しく伝わってくるのだと思います。

ゴーギャンの椅子.jpg
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